TeXいろは

いよいよ時期がやってきました。TeXが艶やかに色づき芳醇な果汁が滴る季節ですね。今回はTeXの文法について書いていこうと思います。対象者は初心者から中級者です。

事前準備

前の記事を見ながらTeXの環境を整えてください。
ここではSotsuronというフォルダ(ディレクトリ)にsotsuron.texというTeXファイルがあるとしてすすめます。
では、節ごとに順々に説明していきます。全部一気にやるとコードが長くなるので分割です。

Head

\providecommand{\tightlist}{\setlength{\itemsep}{0pt}\setlength{\parskip}{0pt}}

\documentclass[uplatex,a4paper,10.5pt]{jsreport}

%==============pre======================
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx,color}

\usepackage[dvipdfmx,hidelinks]{hyperref}
\usepackage{pxjahyper}
\usepackage[backend=biber,style=authoryear]{biblatex} 

\addbibresource{sotsuron.bib}
\usepackage{float}

\usepackage[truedimen,mag=1200,top=20truemm,bottom=20truemm,left=25truemm,right=25truemm]{geometry}

\usepackage{cleveref}

\crefname{figure}{図}{figs.}
\crefname{table}{表}{tabs.}
\crefformat{chapter}{第#2#1#3章}
\crefformat{section}{#2#1#3節}
\crefformat{subsection}{#2#1#3項}

\renewcommand{\figurename}{図}
\renewcommand{\tablename}{表}

\setcounter{tocdepth}{2}
%=========================================

まずはHeadあるいはプリアンブルと呼ばれる部分です。文章の全体を司る設定です。上のコードを2つに分けて説明します。

\providecommand{\tightlist}{\setlength{\itemsep}{0pt}\setlength{\parskip}{0pt}}

\documentclass[uplatex,a4paper,10.5pt]{jsreport}

この2行は魔法のようなものです。プログラムでいうコンパイラ、用紙サイズ、フォントサイズ、論文の種類(japanese science report)を指定しています。

%==============pre======================
\usepackage[dvipdfmx]{graphicx,color}

\usepackage[dvipdfmx,hidelinks]{hyperref}
\usepackage{pxjahyper}

\usepackage[backend=biber,style=authoryear]{biblatex} 
\addbibresource{sotsuron.bib}

\usepackage{float}
\usepackage[truedimen,mag=1200,top=20truemm,bottom=20truemm,left=25truemm,right=25truemm]{geometry}

\usepackage{cleveref}
\crefname{figure}{図}{figs.}
\crefname{table}{表}{tabs.}
\crefformat{chapter}{第#2#1#3章}
\crefformat{section}{#2#1#3節}
\crefformat{subsection}{#2#1#3項}

\renewcommand{\figurename}{図}
\renewcommand{\tablename}{表}

\setcounter{tocdepth}{2}

%で始まるコードはコメントアウトです。文を消さずでも結果に反映させないことができるのはこういった言語の強みですね。
続けて\usepackage{}で使用するパッケージを指定します。これはそこまで触らなくてもOKだと思います。不具合が出たりなんかおかしいな、と思ったら調べて触りましょう(バックアップかgitでのPushは忘れないように)。

\addbibresource{}ではその上で指定しているbiblatexで読み込むbibファイルを指定しています。biblatexとは参考文献を簡単にまとめてくれるツールで、論文を引用する上でなくてはならないCitationを作ってくれます。biblatexに関しては最後に解説します。ここでは、sotsuron.tex以外にもsotsuron.bibというファイルが同じディレクトリにあるのだなと思っていて貰えればOKです。

cleverefは図や表などに参照リンクなどを追加していくパッケージです。その下から、デフォルトでは英語になる参照や章節項を日本語に設定しています。

表紙

\title{ \Large サンプルタイトル}

\author{\\大学 学部 学科\\学生番号\\名前}

% for print
\date{}



\begin{document}

\begin{titlepage}

\begin{center}
\vspace*{100truept}
{\Large 2019年度後期 卒業論文}\\
\vspace{50truept}
{\huge タイトル}\\ % タイトル
%\vspace{10truept}
%{\huge サブタイトル}\\ % サブタイトル(なければコメントアウト)
\vspace{10truept}
{\large English Title}\\ % タイトル
%{\large English subtitle}\\
\vspace{60truept}

{\Large 2020年1月30日提出}\\ % 提出日
\vspace{60truept}
{\Large 大学 学部 学科}\\
%{\Large 専攻など}\\
%\vspace{20truept}
%{\Large 修士課程 平成29年4月入学}\\ % 学籍番号
%\vspace{20truept}
{\Large 学生番号}\\
%\vspace{20truept}
{\Large 名前}\\ % 著者
{\Large LASTNAME Firstname}\\ % 著者

\vspace{60truept}
{\large
指導教員:A 准教授\\
}
\end{center}

\end{titlepage}

上の方にある\begin{document},\begin{titlepage}から論文自体がスタートします。ここは個人ごとに異なりますね。\vspace{}の中身をいじって調整してください。

概要

%====================================================

\begin{abstract}
本研究は〜〜歴史的な分析と実験を基に考察するものである。〜の先行研究を参考に、〜純音の周波数を求める実験をした。この実験により〜があることが示された。さらにこの実験結果を踏まえ〜に着目し、〜らの先行研究に基づき〜を確認した。その結果〜。以上の結果に対し、〜の点から考察を行った。
\end{abstract}

概要を書きます。長すぎず、短すぎずです。別のページとして出力されるはずです。

論文本体

%====================================================

\begin{tableofcontents}
  \setcounter{page}{1}
  \pagenumbering{roman}
\end{tableofcontents}

%====================================================

\chapter{はじめに}\label{chap:はじめに}
\setcounter{page}{1}
\pagenumbering{arabic}

ここははじめに、の章からセクションまでの間に述べることを書いていきます。第1章のあらすじ的なものです。


\section*{音楽と酒の歴史と繋がり}\label{sect:音楽と酒の歴史と繋がり}
\section{原始:儀式の場} \label{sect:原始}
ここは節です。章の中に節がありますね。
・・・古の時代でもそのような行為はされていたとみられ、古代中国の遺跡であるジアフー遺跡においてシャーマンであろう人物が骨笛と酒が入っていた土器と共に埋葬されている事実\autocite{McGovern2018}[\cref{fig:Jiahu-McGovern}]は儀式における音楽と酒の重要性を示している。
\begin{figure}[H]
  \hypertarget{fig:Jiahu-McGovern}{\centering\includegraphics[width=0.25\textwidth,height=0.25\textheight]{../figure/Jiahu-McGovern.png}\caption{脇に横たわる矢印部が笛である。他にも小石が入った亀の甲羅、頭部付近には混合発酵飲料が入っていたとみられる土器が置かれていた。Photograph courtesy J. Zhang, Z. Zhang, and Henan Institute of Cultural Relics and Archaeology\autocite{McGovern2018}}\label{fig:Jiahu-McGovern}}
\end{figure}
%図の大きさは都度調整しないといけない
ジアフー遺跡で出土した楽器・土器に付着していた成分の分析より、楽器は現存する「演奏可能な」ものとしては最も古く、土器にはブドウとサンザシのワイン、ミード、米のビールを混ぜた複雑な発酵飲料が入っていたと結論づけられている。これは人類の音と酒の繋がりを明確に示す資料としては最古のものとなり、その年代はおおよそB.C.6200-5600ごろとされた\autocite{McGovern2018}。即ち少なくともおよそ8000年前から音と酒は繋がっていたと言える。

一部の憑依型シャーマニズムでは楽器に直接酒をかけ、「生命を与える」行為が継承されている。シベリアの端に住むアルタイ人の間ではドラムの材料の木に犠牲が捧げられ、血とウオッカが塗られる。儀式で使用するドラムとそれに捧げられる酒に関してM・エリアーデは『シャーマニズム』において
\begin{quote}
  \emph{「太鼓に生命を与える」ための祭儀は最も興味深いものである。アルタイ・シャーマンが太鼓にビールを振りかけると、太鼓の「枠」は「生き返り」、シャーマンの口を通して、今は太鼓になっている木がどのように森の中で生長し、伐りとられ、村に運ばれたか、を語る。それから今度は、彼は太鼓の皮にビールを振りかけるが、その皮も「生き返って」、過去を物語るのである。}\autocite[堀 一郎訳]{eriade1974}
\end{quote}
と述べている。アルタイ・シャーマンが酒の力で「生命を与える」ことで太鼓が過去を語り、部族の起源をなす規範的モデルや原初の動物について「歌う」ことができるとあり、音に対して酒が重要な役割を果たしている一例となっている。

コメントアウトで囲まれている一番上の部分はページ数のカウンタの設定、目次です。

チャプター(章)の名前を指定してからアラビア数字のページ数を1ページから開始します。以後はPDFにした時に自動でページ数がついていきます。
次にセクション(節)を指定します。\section*はファントムセクションと言います。つまり、表示はされないけど「ある」セクションです。\label{}でラベル付けを行い、管理しやすくします。
\autocite{参照先}[表示名]は参照です。「〜とある[Naruhiko N.,1997]」みたいなです。ここで前述のbiblatexが活用されるのです。とりあえず、最後に解説するので今はこんなもんと思いましょう。
\begin{形式}[配置] \end{形式}は主に図や表・引用を配置するときに使います。\hypertarget{}でリンクを張り、その中で\centeringで中央揃え、\includegraphics[配置]{参照元}で画像を指定します。ここで参照元が相対パスであることに注意して下さい。プログラミングと同じなので、ここが違うとうまくPDFにした時に図が反映されません。例では一つ親のディレクトリの中のfigureディレクトリのものを指定していますね。\caption{}で注釈を付けることができます。
\begin{quote} end{quote}で引用をすることができます。それを\emph{}で斜体にして強調します。

%===================================

\section{近現代:音と酒を扱った作品}\label{sect:近現代}
近代になると、芸術や文化への関心が高まり多くの作品が形作られるようになった。比較的現在と年代が近い物は風化を免れており、美術館等に足を運ぶことで当時の文化の一面を覗くことができる。その中で音と酒が扱われている作品に目を向けると、庶民的な生活の場面から貴族の暮らしぶりまであらゆる場面において音と酒が大切にされてきたかがわかる。例えば以下の作品[\cref{fig:peasant-dance}]は16世紀ドイツの画家であるピーテル・ブリューゲルの『農民の踊り』である。ここではフランドル\footnote{日本ではフランダースと呼ばれる、旧フランドル伯領を中心にしたオランダ南部、ベルギー西部、フランス北東部にかけての地域。(ベルギー・フランダース政府貿易投資局)}の農村におけるケルメス\footnote{教会(または教区)の創立記念日に、後援者に敬意を表して庶民が行う宴}と呼ばれる縁日の様子が描かれている\autocite{okabe2012}。絵画中央左のテーブル脇の男性の手には笛様の楽器、そこに話しかける男性の手には四つ手の陶器が握られている。この笛様の楽器は袋状の器官に空気をためることで息を入れていないときにも笛を鳴らすことの出来るバグパイプという楽器である。四つ手の陶器はティグ(tyg)と呼ばれる飲酒用のジャグ\footnote{日本で言うジョッキ}で、エール酒やビールを仲間と回し飲みをするために作られたものである\autocite{maeda2001}。この二人の男性は明らかに農村部の縁日において音楽と酒が同時に重宝されていたことを示している。

\begin{figure}[H]
  \hypertarget{fig:peasant-dance}{\centering\includegraphics[width=0.75\textwidth,height=0.35\textheight]{../figure/peasant-dance.jpg}\caption{署名がある一方で、年記はない。奥行きを出すための遠近法が用いられていることや、大型の人物が描き入れられていることなどから、ブリューゲルの晩年の1568年頃に描かれたものと考えられいる\autocite{okabe2012}。美術史美術館所蔵(オーストリア・ウイーン)}\label{fig:peasant-dance}}
\end{figure}

\footnote{内容}で脚注をつけることができます。もちろんその内容の中で\autocite{}が使えたり、組み合わせはある程度自由にいきます。TeXの強みですね。

最初の方に\cref{図や表のlabel}が出てきます。これは前述の図の貼り付けの所に\label{ラベル}を使う強みで、このラベルをcref に指定することで自動的に「図〇〇」といった番号付けとリンクが行われます。どれだけ図を増やしても番号を変えて回らなくてもOKなのです。

図を横に並べる

TeXの微妙なところはやはりコードなので、結果を感覚的に制御出来ないことですね。例えば図を横並びに配置するといったところが難しく感じます。そこでテンプレを用意しました。

\begin{figure}[htbp]
 \begin{minipage}{0.5\hsize}\hypertarget{fig:cocktailpiano1}{
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.85\textwidth]{../figure/cocktailpiano1.png}
  \end{center}
  \caption{カクテルピアノの前面。鍵盤と酒を繋ぐ機構がある。}
  \label{fig:cocktailpiano1}}
 \end{minipage}
 \begin{minipage}{0.5\hsize}\hypertarget{fig:cocktailpiano3}{
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.85\textwidth]{../figure/cocktailpiano3.png}
  \end{center}
  \caption{カクテルピアノ背面。レールに沿ってグラスが動き、酒が注がれる。}
  \label{fig:cocktailpiano3}}
 \end{minipage}
\end{figure}

\begin{minipage}を使う方法です。いろいろいじってみて調整してください。

\newpageを使うと強制的に新しいページで始めることができます。

\subsection{セクション名}は項の指定です。さらに子項目に\subsubsection{}があります。この副項は目次に載らないです。

リスト

\begin{itemize}
 \item アイテム1
  \item アイテム2
 \item アイテム3
\end{itemize}

数式などを簡単に書くことができるのもTeXの強みですが、僕の論文では扱わなかったため今回は割愛します。調べたり先輩のものを活用したりしてください。

謝辞

%====================================================

\newpage
\phantomsection
\addcontentsline{toc}{chapter}{謝辞}
\chapter*{謝辞}

〜准教授には研究に関して日頃より様々なアドバイスをいただき、かつ複合的な視点から歴史の分析や実験の考察を行う心構えの大切さをご教授いただきました。学生に寄り添う姿勢には大きく助けられました。心より感謝申し上げます。

おいしいお酒を造って下さるメーカーの方々と酵母に感謝いたします。ありがとうございました。

\vspace{\baselineskip}
なお、本研究の一部は、〜の助成を受けて実施されました。

謝辞は第〜章、というわけに行かないので\phantomsection\chapter*{}で数値を消します。ただコンテンツとして出力するために\addcontentsline{}{}{}を使っています。

最後の\vspace{\baselineskip}は大きな改行のようなものです。

参考文献


\addcontentsline{toc}{chapter}{参考文献}
\printbibliography[title = 参考文献]


\end{document}

\end{document}は最後に絶対忘れないでくださいね。

ここからはbiblatexに関して少し説明します。論文には必ず参考文献を記す必要があります。参考文献の書き方もジャーナルによって指定の方法があるのですが、卒論に関してはそこまで細かい規定はありません。ですのでここでは基本的なものを遵守しつつ載せられる情報を載せる感じでやります。

まず、sotsuron.texと同じところにsotsuron.bibというファイルを作ります。あるいはプリアンブルで指定したもの.bibですね。そこに、インターネットなどで公開されているCitationをどんどん追加していくのです。

例えばGoogleScholarのこの記事なら、下のCitationマークから、

bibTeXを選びます。そして内容をsotsuron.bibにコピペすればOKです。かんたんですね。ここで注意するのが、一番最初の項、@articleの直後の文字列が\autocite{参照元}[]の参照元と同じになっていなければ正しくリンクされません。あと僕がよくやったのは各項を区切るカンマの付け忘れです。こんなしょうもないことでもエラー吐くので注意が必要です。

おわりに

頑張ってナ。