芸工の馬と人工無能

 芸術工学部には馬を模した金属のオブジェが存在します。最初に見たときはなぜそこにあるのかも分からず、ただ大きなそのオブジェを見て「めっちゃサビとるやんけ!」という感想しか出てきませんでした。後にこのオブジェは僕が以前授業を担当してもらった教授が作ったものと判明しました。凄いですね。

 さてこの馬を僕はAIにしようと考えました。世の中には流行のAIという単語、僕も使ってみたかったのです。参考にしたのはTwitter界きっての有名bot、しゅうまい君です。即ち、芸工の人のツイートを取得しそれを元に新たなツイートを作成するというものです。内輪向けではありますし新規性もないのですが、AIの勉強ということでやってみたのです。

 作る段になってアルゴリズムに困りました。AIと呼べる再帰ニューラルネットワークRNNは思ったより上手く文になってくれないのです。これは芸工の人のツイートだけではサンプル数が少なく、学習があまり上手くいかないことが原因と考えられます。そこで従来から文を作るのに向いているマルコフ連鎖を使い、この馬の脳みそにしようとしました。日本語の形態素解析にMeCabというまさしく天才が作ったライブラリをPython3で実装し動かしました。それなりの時間がかかりましたが何とか形になりました。

 この馬の脳みそはAIと呼べるのでしょうか。マルコフ連鎖は現在にのみ依存する学習で、ある出力に対する最も有力な確率を持つ要素を次に出力します。過去がどうである、というものは関係がないのです。できあがった文はそれが文法的に正しいかそうでないか判断されることなく出力されます。またアルゴリズム的にランダマイズされた単語を確率で並び替えるだけなので、そこに学習と呼ぶべきプロセスはあまり存在していないとも言えるでしょう。

 インターネットが広まりはじめた頃に人工無能というものが一部で流行りました。今でもその単語を検索することで流行を垣間見ることができます。自分の実装した馬の脳みそはまさしくこの人工無能なのです。なんだかかわいそうに思えてきました。せっかくなら学習させて人工知能に格上げさせたいところです。

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